昨年5月に地域大学振興法(地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律)が成立した。
人口の一極集中を避ける狙いや、地方振興を目的としたものだ。
この法律の影響を受験生の立場から見ると、複数の見方ができる。
① 法律で制限をしなければいけないほど東京の大学には魅力がある
→ だから東京の大学を受験しよう!
② 法律で制限されたから倍率が上がるだろう
→ だったら倍率がまだ低そうな関西の大学を受験しよう!
③ ②のように考えて東京の大学を受験する人が減るだろう
→ あえて東京の大学を受験しよう!
このように、同じ事柄でも、どのように捉えるか・考えるかによって導かれる結論は異なってくる。
どの考え方が正解ということもなく、どの選択が一番得をすることができるかは「美人投票」に似ている。
自分以外の人たちが、どう考え、行動するのかを予想することになるからだ。
このときに、考慮すべき事柄として、入学定員充足率というものがある。
これは、募集定員に対する入学者の割合である。
受験生の多くは、募集定員100人と書いてあれば入試で上位100人に入らなければいけないと思うかもしれないが、そうではない。
募集定員100人でも、入学辞退を見込んで、合格を100人以上に出している。
募集定員100人のところ、最終的に入学したのが90人であれば、入学定員充足率は90%ということになる。
この入学定員充足率というのは、私立大学経営において重要な意味がある。
というのも、私立大学の学費は年間100万円ほどであるが、これだけでは経営は成り立たない。
大学の主な収入は、受験料収入、学納金収入(学費など)、補助金である。
この補助金は、「私立助成金」などと言われるが、文部科学省がその支給条件を細かに定めている。
もちろん、その条件のなかには入学定員充足率も含まれている。
平成30年度までの入試においては、入学定員充足率が100%を超えた場合には、補助金が減額されるというルールが適用されていた。
このルールは一旦見直され、95%〜100%の場合には4%金額が上乗せされるという制度に変更されている。
東洋経済の記事によると、早稲田大学や慶應大学は年間100億円以上の補助金を受けている。
となると、100億円として、4%で4億円の差が生じるのであれば合格者数を抑制するのが自然だろう。
これらを踏まえると、東京では、早稲田大学や慶應大学の難易度はこれら政策の影響を受けてさらに難易度が上がっていると言えよう。
一方で、東京でも早慶に次ぐ補助金を得ているのは明治大学の49.8億円ということで、補助金の金額が大きく異なってくる。
そうなると、大学側としては、補助金が上乗せされるほうが得なのか、補助金の上乗せを犠牲にしてでも合格者数を増やして受験料収入や学費を得るほうが得なのかが変わってくる。
明治大学の場合、補助金の上乗せが50億円の4%として、2億円。
受験料は1人あたり一般的に3万5千円。
明治大学の入学金は20万円。
200,000,000 ÷ 200,000 = 1,000人
明治大学の学部在籍人数が約28000人であることを考えると、補助金を得るほうが得なのかもしれません。
ちなみにこのことは、明治大学の学生の在籍状況からも読み取ることができます。
このように、補助金の運用が大学の入試にもたらす影響は大きいと言えます。